素材にまでさかのぼるモノづくり

「山神果樹薬草園」は、東京都墨田区にある松山油脂が開いた農園と、それに伴う施設です。東京の会社が、なぜ遠く離れた徳島県に来たのか、不思議に思われる方もいることでしょう。松山油脂は、石けんやスキンケア化粧品を製造販売する会社です。本社のある東京都墨田区と、山梨県富士河口湖町に工場を構えています。化粧品類は通常、メーカーから買いつけた原料を混合・合成してつくられます。しかし、私たちは、単に原料を買いつけるだけでなく、植物の素材にまでさかのぼり、栽培から加工、品質保証までを、自分たちで一貫して行ないたいと思ってきました。2009年には富士河口湖町のお隣、鳴沢村に研究農園を設け、栽培した和洋のハーブの一部を化粧品原料として活用しています。

徳島県と松山油脂の接点

松山油脂ではさまざまな製品をつくっていますが、なかでも国産柚子精油を配合した「柚子(ゆず)ボディローション」が代表格です。2004年から製造販売し、多くのお客様からご好評をいただいています。しかし、近年では柚子をはじめとする和柑橘への注目度や需要が高まり、柚子精油が今後も安定的に供給されるか、不透明になってきました。そんな折、私たちは全国の地方自治体で6次産業化の指導をされている方に巡り会いました。その方を通して松山油脂と徳島県との接点が生まれ、佐那河内村へとたどり着きました。徳島県は柚子の生産量が国内2位、すだちの生産量は国内1位と、和柑橘類の名産地。村内でも栽培がさかんです。

徳島の里山を元気にする

佐那河内村に新しく開いた「山神果樹薬草園」には、三つの意味があります。一つめは、国内外で需要が拡大している和柑橘の精油を安定的に生産すること。二つめは、精油をつくる工程で生じる、和柑橘の圧搾果汁や種子、内皮や袋などの繊維質(パルプ)を無駄にすることなく、それらを原料とした飲料や加工食品、ジャム・ドレッシングや香辛料をつくること。さらに三つめとして、和柑橘の新たな栽培方法と用途を開発し、付加価値を上げることで、和柑橘生産者とともに栽培面積を広げ、徳島県内の里山を元気にすることです。

循環的かつ持続的に

「自然環境は祖先から譲り受けたものではなく、子孫からの借り物である」。これはネイティブアメリカンのナバホ族に伝わる言葉です。水も土も空気も、海の青さも山の緑も、いずれは返さなくてはいけないもの。そう考えると、自然に手を加えるのは必要最小限に、手を加えるときはやさしく、そっと。そんな気持ちにさせられます。山神果樹薬草園でも、何かを判断する時、未来から逆算し、次世代の視点で何を為すべきか考えていきたいと思っています。そして、10年20年後、地元の皆様に評価され、必要とされる存在になることを目指していきます。