STORY歩み、仲間

2020.03.30 新たな試み
和柑橘の可能性を広げる

松山油脂が、山神果樹薬草園の前身として徳島市内に事業所を開設したのは2018年。徳島大学と徳島県立工業技術センターの協力のもと、柚子とすだちの有用成分についての調査・研究を始めました。柚子やすだちの果実は、果皮、果肉、種子の3つに大きく分けられます。精油の原料となるのは果皮です。果肉は果汁へと加工(搾汁)されます。一方、種子はあまり活用されてきませんでした。今後は、柚子やすだちの種子から効率的に脂質を得る方法や、効果的な活用法についても研究を進めていく考えです。

まずは柚子について。柚子といえば、まずは薬味としての食べ方が思い浮かびます。あるいは、冬至のゆず湯を思い浮かべる方もいるでしょう。いずれにしても利用しているのは主に果皮。ゆずの果皮の香り(天然精油)の主成分はリモネンで、75~80%ほど含まれています。リモネンは柑橘類に共通する香気の源ですが、意外なことに、柑橘類の代表であるレモンより、柚子のほうがリモネンを多く含んでいます。また、果皮には、ポリフェノールの一種であるヘスペリジンという物質も含まれています。リモネンとヘスペリジンには、とても興味深い相乗作用があります。リモネンは香気成分でありながら、薬用成分の経皮吸収を促すという働きも持っています。片やヘスペリジンには、毛細血管を強化するという働きがあります。身体がポカポカと温まる柚子湯。その理由は、リモネンによってヘスペリジンの吸収性が高まり、血流が改善されるためと推測されます。

すだちの果皮にもスダチチンというポリフェノールが含まれています。スダチチンは他の柑橘類の果皮に含まれているという報告のない、すだち特有の物質です。スダチチンの作用として特筆すべきは、口から摂取したときの体重増加抑制、糖・脂質代謝改善作用。これは、徳島県立工業技術センターと徳島大学が協働で明らかにし、2019年、日本食品科学工学会誌で報告されました。人への実用化にはまだ時間を必要としますが、果汁を搾った後の果皮の有効活用法として大いに期待されます。

ここまで柚子とすだちという代表的な和柑橘の薬剤と食品としての作用を説明してきました。山神果樹薬草園でも、天然精油を抽出して香気成分として利用するほかさまざまな和柑橘食品を開発していく計画です。また、保湿作用や柔軟作用、肌の引き締め作用など、化粧品原料として利用できる働きを探求し、和柑橘の可能性を広げたいと考えています。