STORY歩み、仲間

2021.03.30 柚子の個性をそのまま生かす
柚子農家 青木正人さん

山神果樹薬草園で初めてペラトリーチェを動かし、柚子を搾汁したのが2020年の11月。その時原料として使った柚子の生産者の一人が、JA徳島市からご紹介いただいた佐那河内村の柚子農家、青木正人さんでした。佐那河内村役場からほど近い、ほぼ村の中心にある農園で、800本近くの柚子とすだちの木を、ご両親とともに育てられています。

(以下、カッコ内は青木さん)

「以前は県外に出て建築会社で現場監督をしていたのですが、両親が兼業でしていたこの農園の面倒を一緒に見るために村へ戻ってきました。『定年退職をしてから』とも考えたのですが、どうせ継ぐのなら、体力もあり、両親もまだ現役の今がいいと思ったのがちょうど42歳のときでした。今から15年前のことになります。」

「最初はわからないことばかりでした。特に枝の剪定は難しかった。やっていくうちにいろいろと疑問が出てきました。私は常々仕事をするうえで、疑問を持つことを大切にしています。それがないと物事が向上していかない、というのが持論です。当時は、疑問を解決するために講習会にも積極的に参加したのですが、学べば学ぶほど奥が深く、『これは教わって身につくものではない。深く考えすぎて立ち止まるより、まずは手を動かす。経験しかない』と思うようになっていきました。」

剪定とはどういう仕事でしょうか。

「収量が収入につながる世界なので、いかにたくさん実をつけさせるかが一番重要です。枝が伸びた時に日陰にならないか、枝同士が実を傷つけ合わないか、よく観察しながら、枝葉の伸びゆく先をイメージするのが基本です。農園の柚子の木をよくよく見ていただくとわかると思うのですが、同じ柚子の木でも、どれもがまったく同じに育つわけではありません。木にも1本1本個性があります。盆栽ではないので、無理に同じ形に揃えなくていい。枝が伸びようとしている方向と、私たちが実をつけてほしい場所の折り合いを、木と相談しながらつけていく感じです」

柚子を育てること、農業をどのように考えていますか。

「暑さ、寒さ、収入の不安定さは農業にはつきものです。でも、収穫のときには、1年かけてひたむきに柚子と向き合った成果を感じます。どんな料理に使われるのだろう、喜ばれるだろうか。それを想像してワクワクする感じが達成感につながる。その達成感を積み重ねた先にモチベーションがあります。自然を相手にしているから、無理にあがいても仕方ない部分があります。だから、肩の力を抜いて、自然にあらがわず。目の前にある柚子への愛情を忘れない。これが柚子農家を続けていく秘訣かもしれません」

特に剪定についてのお話の時、青木さんは表情を一層明るくされました。聞き手も強く引き込まれた、熱のこもった、生き生きとしたお話しぶりでした。青木さんには、これからも折に触れて色々なお話をお聞かせいただきたい、と私たちはワクワクした気持ちでいます。どうぞよろしくお願いします。