STORY歩み、仲間

2021.10.29 一期一会の色
「果皮染め」始めました

和柑橘の外皮から精油を、果肉から果汁を抽出した後には、大量の外皮・内皮、袋やパルプが出ます。なかでも惜しいと思うのが柚子の外皮。精油を搾った後でも特有の黄色を残しています。素材が食物としての価値を失っても、丸ごと最後まで使いきるのが山神果樹薬草園です。色を生かして染め物ができないか、試してみることにしました。

徳島県は、古くから「阿波藍」と呼ばれる藍と藍染の産地です。山神果樹薬草園のある佐那河内村のお隣・神山町にも、草木染めを生業とされている染昌さんがいらっしゃいます。展示会にお邪魔したのですが、「搾った後の柚子の果皮を使って染め物をしたい」と話したところ、初対面にもかかわらず草木染めについて詳しく教えてくださいました。「柚子の枝や葉で染めたものは見たことがあるけど、果皮を使うのはあまり聞いたことがない。おもしろそうだね」と励ましてもいただき、私たちは大いにやる気を高めたものです。

ここから試行錯誤が始まります。草木染めはふつう素材を煮出すので、柚子の果皮も煮出してみたのですが、美しかった黄色が茶褐色に変わってしまいました。柚子の外皮の色素は熱によって変質するのです。それを知り、加熱せずに浸け込んでみたところ、わずかに黄色が出てきました。しかし、イメージしていた、柚子の果皮のような鮮やかな色には染まりません。アルカリの液に浸け込むと濃く発色する、とわかるまでに1か月ほどかかりました。思い描いていた色に染め上がったのも、担当者が他の作業に取りかかり、予定より長く浸け込んでしまったから。しかし、そのおかげで色素の抽出時間と染色時間のバランスを導き出すことができました。

山神果樹薬草園では、2種類の素材でオーガニックコットンタオルを染めています。素材は柚子、そして杉の枝葉です。柚子は外皮を使っているので「果皮染め」といったところでしょうか。柚子も杉も、生育状況などにより、染料にした時の色合いが変わるのですが、一期一会の色として、楽しんでいただけることを願っています。